担当者によって融資が通ったり通らなかったりする理由

通らないのには理由がある。理由がわかれば、対策すればいいのです

「いったん融資を断られたのに逆転できるの?」と疑問に思う読者も多いでしょう。しかし私の経験からお話しすると、金融機関に融資を断られた事業者で「絶対に無理」という事例は3~4割程度。裏を返せば、残りの6~7割は何とかできそうな案件です。

では、なぜ同じ案件なのに「結果のばらつき」が起こるのでしょう。今日はその理由と、背景をお話ししましょう。

 

理由①その銀行の「方針」「姿勢」とあわない

金融機関が融資を可決/否決する要因は複数あります。

  • 企業の経営内容、財務内容
  • 経営者の資質、人間性、経営能力
  • 金融機関の融資方針、支店長の考え方
  • 金融機関とその企業との関係性の深さ
  • 提出した資料の内容や出来映え など

否決理由は金融機関ごとに違うため、ひとつの銀行に断られたからといって「どこからも融資してもらえない事業者」とは限りません。

あきらめるのはまだ早い。メインバンクなど取引先金融機関で否決された後、別の金融機関に持ち込んで融資してもらえた事例は数え切れないほどあります。

だからこそ、そんなとき気軽に打診できる「もうひとつの金融機関」とのおつきあいを、私は以前から強く推奨しています。

理由②融資稟議書に説得力がない

金融機関が融資をするときは、一般的に、担当者が「融資稟議書」を作成します。

その融資稟議書を、支店内で上司(渉外担当の責任者や貸付担当の責任者)や支店長が審査。そこでOKが出れば、(金額にもよりますが)本部の審査担当部署に送られます。

本部の審査担当部署では、少なくとも3名以上が当該稟議書を審査して、融資の可否を判断。

つまり、支店と審査担当部署で少なくとも6名以上がその融資案件についての判断を行うのです。

もうおわかりでしょう。最初に担当者が作成した融資稟議書の内容次第で、可否が大いに左右されやすいのです。

なぜハズレ担当者が増えた(ように感じる)のか

多くの金融機関で「担当者(正しくは渉外担当者)」として取引顧客を訪問しているのは、たいてい10年目以下の「一般(ヒラ)」「主任」「係長」など。1年目から担当者として外回りに出す金融機関は少なく、多くの金融機関では入社2年目以降の行員や職員です。

しかし入社2年目と10年目では、知識も経験も違うもの。当然、作成する融資稟議書のレベルも違ってきます。もちろんレベルの低い稟議書は審査に通りません。

とくにここ3年以内にデビューした渉外担当者が経験しているのは、ほぼ「コロナ融資」のみ。一般的な融資稟議書を作成した経験が乏しいのです。コロナ以降に厳しくなった審査で融資可決に至る融資稟議書を書けるかと問われれば… なかなか難しそうです。

たしかにベテランの士業・コンサルタントから、「銀行担当者が原因で融資が否決」と担当者レベルを問題視する声を時おり耳にします。しかし銀行員を責めないでください

一般的な案件はもとより、本部の審査部と切り結ぶような経験をしていないのは、彼らのせいではない。また融資以外に、保険や投信などの知識も身につけなければいけない時代なのですから。

問題があるなら、対策すればいいだけのことなのです。